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原 りょう 「そして夜は甦る」





西新宿の高層ビル街のはずれに事務所を構える私立探偵沢崎の許へ
海部と名乗る男が訪れる。

男はルポライターの佐伯が先週ここへ来たかどうかを知りたがり、
二十万円入った封筒を沢崎に預けて立ち去った・・・

かくして沢崎は行方不明となった佐伯の調査に乗り出し、
事件はやがて過去の東京都知事狙撃事件の全貌と繋がっていく・・・

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さて、原りょう ですね

ハードボイルド私立探偵小説

派手なドンパチやらグロい場面やら込み入ったトリックがない

時代を感じさせるアナログな私立探偵物語

まずこの物語に出てくる人物のキャラクターが良い!

一人一人個性をはっきりさせていて全て魅力的

むしろこの時代の探偵物の方が読み手をわくわくさせるなぁ

携帯もなければPCも使わず、個人情報の規制もゆるい時代だから

人物特定からたぐり寄せる事件解決のプロットが面白い

二十万入った都市銀行の封筒から

「海部マサミ」なる預けた人物を探しあてるなんて、考えただけでも面倒くさい

それを電話帳から同性同名の海部マサミを尋ねる

電話口での会話からカンを働かせながら特定させて行く


セリフ回しが粋で無駄がなく

皮肉なジョークがこれまた面白い


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秋の終わりの午前十時頃だった。

三階建モルタル塗りの雑居ビルの裏の駐車場は、毎年のことだが、

あたりに一本の樹木も見当たらないのに落ち葉だらけになっていた。

私は、まだ走るというだけの理由で乗っているブルーバードをバッグで駐車して

ビルの正面にまわった。

鍵のかからない郵便受けの中のものを取り、

一人しか通れない階段を昇り、

決して陽の射さない二階の廊下の奥にある自分の事務所へ向かった。

なにしろ東京オリンピックの年に

マラソンの未公認世界記録なみの早さで建てられた代物なのだ。


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「更科氏は貴重な時間をさいて君と話しておられる。

きみの好奇心については、のちほど私のほうから差支えない範囲で話しても構わない。

しかし、ここはすみやかに氏の質問に答えてもらいたい。

そのほうが君にとっても効率のいい仕事をすることになるはずだ。」

私は更科氏に言った。

「弁護士を雇えるような身分ではないので、

彼のいまの忠告を正しく理解できたかどうか

自信がないのですが・・・

要するに彼は、

ぐずぐず言わずに知ってることを喋ったほうがてっとりばやく

金になるぞ、と言ってくれているのですか」


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橋爪は即座にナイフの刃を元に戻し、

私のあごの下に切っ先を当てた。

「おれがなぜおまえを殺らねえか解るか。

ヤクザが誰かを殺るときは、自分よりも相手のほうが

失うものが大きいという損得勘定があるからだ。

世間のやつらがヤクザを恐れるのも、

その損得勘定からさ。

ヤクザと殺り合っても、向こうが丸損だからな。

悲しむ親がいるし、仕返しを恐れる妻がいるし、

路頭に迷う子供がいるし、馬鹿げたことをしたと言う友達もいる。

だから、ヤクザには逆らわないでおこうってわけだ。

ところが、おまえはどうだ。

ここでおまえを殺ったって、

おまえよりおれのほうが失うものが大きいような気がするのは、

一体どういうわけだ?」



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Author:cn7145
生れも育ちも仙台。外見も性格もとても地味。物があふれているのが苦手。食べ物の好き嫌いほぼ無し。本と猫好き。好きな言葉「喫茶喫飯」。

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